【要約】『ウォール街のランダム・ウォーカー』の感想・まとめ。
今回は、バートン・マキール著の『ウォール街のランダム・ウォーカー』を読んだので、要約と感想・まとめを書いていきます。
はじめに
本書は45年以上読み続けられ、150万部を超える世界的ベストセラーとなっています。投資をしている人なら、聞いたことや読んだことがあるのではないでしょうか。
ページ数は500ページを超えるのでかなり分厚く、読むのに時間がかかります。しかし、バブルや暴落、年代に合わせた資産配分など、多くのことが書かれているので、読むべき一冊だと思います。
そして、以下の『敗者のゲーム』も本書と同じくらい有名で、読むべき一冊だと思うので、気になる方はご覧ください。
著者が伝えたいこと
著者は現在の12版まで、次のようなことを伝え続けています。
「個人投資にとっては、個々の株式を売買したり、プロのファンド・マネジャーが運用する投資信託に投資するよりも、ただインデックス・ファンドを買ってじっと待っているほうが、遥かに良い結果を生む」
(1ページ)
このように、本書は「なぜ、インデックス投資が良いのか。」ということを過去のデータや様々な実務経験などを用いて解説しています。
また、個別株の売買を完全に否定しているわけではありませんが、「どうしても個別株をやりたければ 、インデックス投資を軸にしてやる方が良い。」と書いてあります。
※これより先は要約となりますので、「本書を読みたい!」という方は気を付けてください。
要約
『ウォール街のランダム・ウォーカー』は、全14章で構成されています。
正直、全てを書いていくことは大変なので、私が「これは伝えたい!」というところを抜粋していきます。
ランダム・ウォークとは
まずは、第1章のところからです。
本書のタイトルでもある、「ランダム・ウォーク」とは、そもそもどのような意味なのでしょうか。
この言葉は、「物事の過去の動きからは、将来の動きや方向を予測することは不可能」ということを意味しています。
これを株式市場で言うと、「ファンドマネージャーや証券アナリストたちが会社の収益予想やチャート分析などをするのは無駄。」ということです。
また、「目隠しをしたサルに銘柄が書かれたボードにダーツを投げさせ、それで選んだ銘柄のポートフォリオを組んでも、専門家が色々と分析して選んだ銘柄のポートフォリオもさほど変わらない。」とも書いてあります。
このように、「相場を読める人はいないから、インデックス投資をした方が良い。」ということを教えてくれます。
そんなことを言われたら、間違いなく専門家は怒るでしょう(笑)
また、インデックス・ファンドの反対に「アクティブ・ファンド」というのも存在します。
インデックス・ファンドが市場平均を目指すのに対して、アクティブ・ファンドは市場平均以上を目指そうとします。
一見、アクティブ・ファンドの方が良いように聞こえますが、8割近いアクティブ・ファンドが市場平均に負けているという結果が出ています。
そのため、市場平均に勝っているアクティブ・ファンドを見つけるより、インデックス・ファンドに投資した方が確率的には良いことになります。
効率的市場仮説
次に、第7章のところからです。
本書には効率的市場理論という言葉が何度か出てきます。
これに関しては、信じるか信じないかはあなた次第。という感じです(笑)
ただ、これを信じない人でもこのような考え方がある。っていうことを頭の片隅にでも入れておいてください。
さて、効率的市場理論について説明していきます。
これには、「ウィーク型」「セミストロング型」「ストロング型」の3つに分類しています。
3つとも、「株価は新たな情報に対して非常にすばやく反応するため、継続的に利益を得られる投資家はいない。」というところは共通しています。
それでは、それぞれの細かな違いについて簡単に解説していきます。
-
ウィーク型
これは、「株式や債券、不動産のような取引資産の価格は過去に公開された情報を全て織り込んでいるため、テクニカル分析が投資家にとって何の役にも立たないもの。」と、書かれています。
そのため、株価はある期間から次の期間にかけて、ランダム・ウォークに近い動きを示します。
-
セミストロング型
これは、「市場でつけられている株価には、貸借対照表や損益計算書、あるいは配当公約に関するあらゆる企業情報は、公表されている限りすべて織り込まれている。」と、書かれています。
そのため、「プロがこれらのデータを分析しても何の役にも立たない。」と言われています。
-
ストロング型
「すでに公表されている情報のみならず、今のところまだ外部に伝わっていない情報までも、株価はすでに織り込んでいる。」と、書かれています。
そのため、「インサイダー情報でさえ投資家の役に立たない。」と言われています。
このように、効率的市場理論は「テクニカル分析もファンダメンタル分析も意味がない。」と、言っているのです。
そうなると、分析の勉強をしているのがバカバカしく感じてしまいますよね。
したがって、私たちはインデックス投資をした方が長期平均的には良い結果を出せるでしょう。
しかし、これらはあくまでも仮説となっているので、捉え方は人それぞれです。
10のアドバイス
最後に、第12章のところからです。
上記の2つの章は、信じる投資家と信じない投資家に分かれると思います。しかし、この章ではすべての投資家に役立つ10項目が書かれています。
これを参考にして、投資と向き合ってほしいと思います。
第1条 現金を貯める
- 財産を増やすための原動力はあなたの「貯蓄」
- 貯蓄するには強い意思が必要
- 今から貯蓄を始めることが重要
- 先取り貯蓄や財形制度があるなら活用する
第2条 万が一のために現金と保険で備える
-
誰でも突然まとまったお金が必要になる時がくる
-
保険でカバーされる人は、3カ月分の生活費を賄える手持ち現金が一応の目安
-
それぞれの状況(配偶者・子供の有無)に合わせて、保険に入っておく
第3条 預金でインフレ・ヘッジ
-
日本のインフレ率は1%ほどで、預金金利は良くて0.2%くらい
-
そのため、預金はインフレ・ヘッジにならない
-
しかし、年によってはインフレ率が金利を下回ることがあるかもしれないので、その場合はインフレヘッジとなる
第4条 節税対策と年金制度の活用
-
勤め先に企業型確定拠出年金制度があれば、加入する
第5条 運用目標を明確にする
-
株式:債券:不動産:金:現金などの資産割合を明確にする
-
運用目標をはっきりさせ、それに見合ったリスクをとる
-
もし、株の暴落が怖くて夜も眠れないのなら、安眠できる水準まで株のウエイトを下げる
-
目標もなく投資をしていると「自分はどこに向かっているのか」と、迷子になってしまう
第6条 マイホームと不動産投資
-
「マイホーム」VS「賃貸」が議論になることがあるが、建てる地域によっては売却益を狙える
-
東京などの人口増加をしているところでは、不動産の価格は上昇している
-
世界の人口が増加を続ける限り、不動産は最も強力なインフレ・ヘッジになる
-
不動産投資のリターンは、インフレが加速している局面では株式を上回る傾向がある
-
アセットアロケーションに加えることで、リスク分散にもなる
第7条 債券市場に注目
-
株式との相関性が低いため、大きなリスク分散効果が得られる
第8条 金、ダイヤ、書画骨董、コレクター・アイテム
-
金投資はあくまで、より幅広い分散効果を得られるための小さな脇役にすぎない
-
一般の投資家がダイヤモンドの真の価値を評価することはほとんど不可能なこと
-
書画骨董、コレクター・アイテムを買って楽しむには良いが、値上がり益を期待して買ってはいけない
-
商品先物市場は、スピード勝負でプロたちは大いに儲けているが、個人投資はいいカモにされているだけ
第9条 投資にかかるコストに目を配る
-
投信やETFで運用する場合には、コストの差が鍵
-
支払うコストを節約した分、リターンが増える
-
インデックス・ファンドは頻繁にしないため、売却益は発生せず、税金も節約できる
第10条 分散投資が大原則
-
分散投資はリスクを低減し、長期平均的に投資目標を実現するために十分な水準のリターンを達成する可能性を、大いに高めてくれる
感想・ まとめ
今回は、『ウォール街のランダム・ウォーカー』について書いていきました。
本書は500ページ以上もあり、内容も難しい本ではありますが、「インデックス投資の良さ」や「分散投資の大切さ」、「投資戦略」が書かれているので、面白かったです。
また、現代のポートフォリオ理論において有効と言われている、「リスク・パリティー」など最新の戦略も解説されているので、自分の知らないことを知れて良かったと思いました。
『ウォール街のランダム・ウォーカー』が45年以上も多くの投資家に読まれ続けている理由が分かりました。
皆さんも一度読んでみて下さい。今までの考え方や常識が少しは変わるような気がします。