【要約】『敗者のゲーム』の感想・まとめ
今回は、「時代を越え、投資家の中で読み継がれている名著」で、インデックス投資家のバイブルとも言える、『敗者のゲーム』について要約し、感想とまとめを書いていきます。
はじめに
敗者のゲームは、全米100万部の超ロングセラーで、多くの投資家に読み継がれていいます。そのため、投資家の運用哲学バイブルと言って良いでしょう。
なぜなら、投資の心構えをはじめ、人生終盤の運用、投資の終わり方、暴落時の対応などが書かれているからです。
なんと、この一冊を読むだけで投資の入り口から出口までを網羅出来てしまうのです。
本書の内容は三部で構成され、22章まであります。ページ数は全261ページとなっています。
「どんな本なのか。」と聞かれたら、表紙にも書いてあるように「市場に勝とうとすることは無意味である。」ということを教えてくれる本です。
また、本書は一貫して「インデックス投資をすることが最も簡単かつ結果が出る」「運用基本政策の確立・堅持をする」ということを言っています。
激しく変動するマーケットに右往左往する。当初立てた投資計画を無視して、高値で買って安値で売ってしまう、、、投資家ならこういった経験があるはずだ。
この先、ITバブルやリーマンショックに遭遇したら、どうすればよいのか?本書はそのための現実的な対応を教えてくれる。
投資で成功するというのは、難しい証券分析などの専門知識や経験を身につけることではなく、ましてや短期的に市場を出し抜こうとすることでもない。市場平均利回りを上回る(=市場に勝つ)ことがきわめて難しくなった今、最も簡単かつ結果が出る方法は、インデックス・ファンドを活用することである。
上記をまとめると、乱高下する株価に左右されずに、インデックス投資を続けなさい。ということを言っています。
初心者におすすめな理由
『敗者のゲーム』は読むべき、持っておくべき一冊だと思います。
投資技術的なことよりも、投資の基本となる心構えや過去から学べること、暴落が起きた時の対処法などを学ぶことが出来ます。
暴落の例として、2008年に起きたリーマンショックが書かれています。私を含め、投資初心者は株価大暴落や低迷期を経験していません。そのため、大暴落や低迷期に直面した時に考えることや行動が書かれているので、とても心強いです。
そして、市場の上昇・下落に振り回されずに自分の投資目的を達成するため、適切な運用基本方針を策定・堅持することが大切だと教えてくれます。
慎重に検討された投資政策を選択し、その政策を守り続けることこそ、投資で成功する最良の近道である。そのため、何か複雑な行動を取る必要はない。ただ、マーケットの上昇・下落に振り回されずにじたばたしないことである。
(218ページ)
なぜ、インデックス投資なのか
本書では、市場に勝とうとする「アクティブ・ファンド」よりも、市場平均を狙う「インデックス・ファンド」への投資を強く推しています。
それは、過去のデータが物語っているからです。
アクティブ・ファンドは年間成績で約6割、10年で7割、20年で8割のマネジャーが市場に負けていることが分かっています。
そのため、20年後の市場に勝っている2割を当てることが困難なので、アクティブ・ファンドよりもインデックス・ファンドへの投資が良いことになります。
市場に勝とうとする運用は、いつも法定速度より時速10キロ上回って運転するようなものだ。運転で求められるのは、道を間違えずに、ほどほどのスピードで運転し、決して大事故を起こさないことである。
(71ページ)
ここから先は要約となります。ネタバレ注意ですので、「見たい!」と思った人は、自分の目で確かめてみて下さい。
『敗者のゲーム』 要約
第1部
ここからは、私が敗者のゲームを読み、心に残り大切だと思ったことを書いていきます。第1部では、「資産運用をしていくうえで押さえておくこと」について書かれています。
『敗者のゲーム』と『勝者のゲーム』の違い
第1章で、いきなり本書のテーマでもある「敗者のゲーム」について書かれています。
『昔は「勝者のゲーム」であったが、時代とともに「敗者のゲーム」に変わった。』と、著者は言っています。
では、著者の言う「敗者のゲーム」と「勝者のゲーム」の本質的な違いとは何なのでしょうか。
本書では、いくつかの例が挙げられています。その中で、プロとアマチュアのテニスの試合が例に挙げられています。
どちらのゲームも同じ道具、服装、ルールで変わりはありません。しかし、以下のように試合内容は変わってきます。
- プロ(勝者のゲーム)
プロは長いラリーの末、敵の手の届かないところへ強力で正確なショットを放ち勝利をつかみます。そして、めったにミスを犯すことがありません。
- アマチュア(敗者のゲーム)
一方、アマチュアはネットにかかったり、ラインから出たりと、相手のミスで得点につながることが多々あります。
このように、2つのゲームは正反対なのです。とすれば、私たちはとにかくミスの少ない、確実な投資を目指すべきなのです。上記で言うと、「敗者のゲーム」です。
そして、私たちが勝つ方法として、著者が以下のようなことを結論として言っています。
長期投資の明確な目標設定に集中し、その目的を実現するために合理的かつ現実的な投資政策を選択したうえで、その政策を、自己規律を持って、忍耐強く、しっかり貫いていくことである。
(27ページ)
第2部
第1部では、資産運用をするうえで押さえておくべきことを学びました。そして、第2部ではその運用を理論的に見ていきます。
長期投資の魅力
長期投資の魅力は何と言っても「複利」です。長期になればなるほど、投資商品の魅力は高まります。一年間ではハイリスクだった商品が「複利」によって、ローリスクに様変わりしてしまうこともあります。その例が株式投資です。
次の画像をご覧ください。
(83ページ)
これは、インフレ調整後の株式、債券、キャッシュの収益率変動幅をグラフにしたものです。横軸が年数、縦軸がリターン率を表しています。
株式の1年目の場合、最高リターンは53.4%のプラスとなり、最悪では37.4%のマイナスとなっています。
「投資はリスクがある。」と、多くの人が言う理由が分かります。しかし、年数が経てば経つほど「投資はリスク」という常識が覆ります。
もう一度、先ほどの画像をご覧ください。驚くことに投資期間が長くなるほど、株式のプラスとマイナスが減り、収益率変動幅が小さくなっています。
そして、収益率は平均6%ほどのプラスになっています。
このデータでいけば、20年以上株式を保有しておけば損はしないということになります。 1年目がハイリスク(-40%)・ハイリターン(+50%)であったのに対し、長期投資をすればノーリスクで6%ほどの利益を得ることが出来るのです。
これが長期投資の魅力の一つです。
「時間」は運用というものを、良くも悪くもまったく様変わりさせるものである。―(略)―十分な時間が与えられれば、一見、魅力的に思えない運用も大変有効なものになる。
(80ページ)
第3部
最後の部では、著者が私たち個人投資家に多くの助言をしてくれます。その中で、「個人投資のための十戒」として以下のようなことを言っています。
個人投資家のための十戒
①貯蓄すること。
- 固定費(通信費や保険料など)を見直しましょう。
- 毎月いくらかを先取り貯蓄(財形貯蓄など)しましょう。
- 貯蓄したものを将来の幸せや安定、三大支出に備えて投資をするようにしましょう。
②相場の先行きに賭けてはいけない。
- 相場を見ながら売買するということは、プロを相手にしていることを自覚してください。もし勝てたとしても、ギャンブルと同じように、次も勝てるとは限らないです。
- そうなると、インデックス投資を長期にわたり積み立てていくことが最適ではないでしょうか。
③税務上有利という理由で動いてはいけない。
- 魅力がないのに、「節税になるから」という理由だけで商品を買ってはいけません。
- 「NISA」や「iDeCo」でも、自分のリスク許容度、商品の質を理解したうえで買うようにしましょう。
- 保険も節税になるからと言って、必要でもないのに入るのはダメです。
④自分の住宅を投資資産と考えてはいけない。
- 著者は「住宅は家族と生活する場所で、それ以上のところではない。」と、言っています。
- 大体の地域で、家を買った瞬間から価値は減少していきます。投資資産とはなりません。しかし、家族の幸福のための投資としては意味があります。
⑤商品取引は考えものである。
- 著者は「コモディティ取引は、投機にすぎない。」 と言っています。また、経済的付加価値を生まないとも言っています。投資とは言えません。
⑥証券会社の担当者に気をつけなさい。
- 彼らは素晴らしい人たちだが、あなたを儲けさせるのではなく、あなたから儲けることが仕事です。
- ネット証券を開設することをオススメします。手数料も最低限の商品が多いので、低コストで良いパフォーマンスが出来るのではないでしょうか。
⑦いわゆる新金融商品に投資してはならない。
- この手の商品のほとんどが、投資家に保有されるためというよりも投資家に売るために設計されています。
- 他の投資家の話にも耳を傾けてはいけません。
⑧元本、利息が安全だとか、リスクが少ないという理由だけで、債券に投資してはいけない。
- 債券価格も株式ほどではないですが、変動します。
- 債券は、長期投資の真のリスクであるインフレに弱いです。
- しかし、債券を保有しておくと資産変動が緩やかになるので、「絶対にダメ!」というわけではありません。
⑨長期の投資目的と投資方針、資産計画を文書にして書き出し、それに沿って行動すること。
- 投資期間がどのくらいで、将来いくらぐらい必要で、月にいくらなら投資に回せるのかなど、計画を立てて投資をすることが大切です。 その時に、最低限を見積もって計画を立てると良いかもしれません。
- 当初の計画とはずれることがあると思います。年に1度くらいは計画の再確認、見直しをしてください。
⑩直感を信じて投資してはいけない。
- 「うまくいって有頂天の時は、大火傷が待っていると思った方が良い。」 と言っています。
- だれも相場の予想はできないので、変に売買することはオススメしません。ただただ、インデックス投資を行いましょう。
- そして、大暴落時や焦った時は何もしないこと。も大切です。
おわりに
最後に著者は、以下のようなことを述べています。
- 投資の世界において、優秀で勤勉なプロの数は今後増えることがあっても、減ることはない。投資が1960年代のような「勝者のゲーム」になることはまずないだろう。
- マーケットに占める機関投資家のシェアも拡大することはあっても縮小することはない。投資は危険なゲームであり続けるだろう。
- やがてそのうち、1人の投資家を除いて、すべての投資家がインデックス・ファンドを使うようになるかもしれない。そうなったらその最後は大儲けするだろう。そうした事態になったら、ぜひ連絡してほしい。
(220ページ)
まとめ
今回は、チャールズ・エリス著の『敗者のゲーム』 について書いていきました。
本書は、これから投資をする人や初心者投資家が読むべき一冊だと思います。
激しく乱高下する株価にどうやって立ち向かえば良いのか、多くの人が思っていると思います。その答えは簡単で、インデックス・ファンドへの投資が最適です。
インデックス・ファンドは、面白くもおかしくもありませんが、とにかく結果が出ます。インデックス・ファンドは、長期的にほとんどのポートフォリオ・マネジャーを打ち負かしているというデータがあります。
市場に勝とうとして虚しい努力を続ける「勝者のゲーム」から、長期資産配分と運用基本の確立・堅持という「敗者のゲーム」をしていきましょう。
ぜひ、本書を手に取って見て下さい!ご覧いただきありがとうございました。